園便り 平成29年9月

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園便り

今月の園便り 9月

長い夏休みが終わり、たくさんの思い出を心につめて、真っ黒に日焼けした子どもたちが、また元気に幼稚園に戻ってきました。キラキラ輝く目、一回り大きくなった体が充実した夏休みの生活を物語ってくれます。一人ひとりの夏休み中のお話を聞くのも、学期当初の楽しみの一つです。二学期は大きい行事小さい行事と続き、楽しく忙しい毎日になりますが、行事をとおして一段と成長する子どもたちの姿を見ることができるでしょう。

今年度から始まった長期休暇中の預かり保育では、毎日十数名の子どもたちの楽しそうな声が園内に響き、幼稚園の一角で活き活きとした時間が流れていました。登園後のモンテッソーリ活動、水遊び、お祭り、「野菊の家」や「中高理科室」訪問など学期中の活動の継続と共に、夏休みならではの体験もたくさんできました。またクラスを超えて異年齢の子どもたちが集まり、長時間一緒に過ごしたことで、自然に、助けあったり協力したりする姿が見られました。一斉休業日後に再会した子どもたちは、夏休み当初の顔と全く違う少しお兄さん、お姉さんになっているのが印象的でした。

毎年行われている日本モンテッソーリ協会(学会)全国大会が今年は東京で行われました。第50回という大きな節目の年にあたり、「子どもによりそう大人たち」と言うメインテーマに大きく変化する現代の社会・教育を見据え、―モンテッソーリ教育の昨日、今日そして明日へ― と言うサブテーマのもとに講演、課題提供、研究発表など内容の濃い研修会でした。カリタス幼稚園では担任全員と主任、園長の12人が参加し、有意義な3日間を過ごすことができました。

人生最早期の養育環境が、人格形成に決定的な影響を及ぼすことはみなさんもご存じのことと思います。生涯にわたる人格の基盤を作ると言われ、ますます幼児期からの教育の大切さが謳われるようになります。しかし「子ども扱い」「子どもの使い」「子どもだまし」などの言葉にイメージされるように、私たち自身の中に子どもに対する差別や偏見の意識がまだまだ根強く残っています。社会における様々な問題とそのしわ寄せが小さく弱い子どもたちに向けられる現実も確かにあります。能力による子どもの序列化、虐待やネグレクト、劣悪な環境の中で子どもをモノ扱いにする大人たちなど深刻な現実が世界にあふれています。

マリア・モンテッソーリが生きた150年ほど前は現代よりさらに子どもに対する差別意識が強い時代でした。未熟で不完全な子どもを躾けるという考え方はなかなかなくならないものです。ですから、モンテッソーリ教育を学んだ者は先ず自分の生き方、考え方を見直さなければなりません。『子どもから学びなさい』『いつも自分を整えなさい』とモンテッソーリ女史は繰り返し述べていますが、子ども一人ひとりを人格ある者として向き合う大人の姿勢を指摘しているものだと思います。

母親からの確かな愛情を確信し、自分の存在を肯定し、やればできるという自信と、自分で考え決めることが出来る自由で強い意志力は生涯にわたる大きな力となります。その年齢にふさわしい育ちのありかたを大切にし、自ら伸ばしていけるよう援助してまいります。

皆さまには一層の理解をたまわり、ご協力いただけますようお願い申しあげます。

<モンテッソーリ 【日常生活の練習】>

モンテッソーリ教育には、5つの領域があります。日常生活の練習・感覚・数・言語・文化です。すべての土台は、日常生活の練習の領域にあります。どんなに文字が書けても、難しい数式が解けても、自分の服さえ着脱できない・・などという基礎の欠けた早期教育ではバランスの良い成長は望めません。日常生活の練習では一つひとつの行為を自分でやりながら、自分の生活を依存から自立へと導きます。「わたしが一人でできるように手伝ってね」という子どもの内なる声を尊重し、なるべく手出しをせず見守ります。体全体を動かす、バランスをとる、手、腕を使う、指先を使うなどさまざまな活動がありますが、「やってみたい」「できるようになりたい」という子どもの欲求は、できるまで繰り返し、困難さを克服したとき大きな自信と成長をもたらします。

日常生活の練習をとおして指先の訓練、正確で合理的な物の扱い、自分自身のそしてまわりの物に対する配慮を身につけることは、知的能力の基盤となる最も大切な分野です。